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2018年11月25日日曜日

気付きへの目の付け所


気付きへの目の付け所 シリーズ(4


 物の見方の形成
それでは、ここで人の認識の特徴を調べ、‘人はおのおの自分のフィルターを通してしか見ないという性質・性格を持っている’ことを明らかにしましょう。そして次に、社会レベルでのその時代の共通したものの見方(これをパラダイムという)がどのように形成されるかをみて、その形成に関する要素がループをなしていることを示し、このことを人の心理や歴史的事実を用いて詳しく実証してみます。

[1] 人は一致したことを信じ易い 
“人は経験を通して自らの見解を固めていく”と考えるのは自然でしょう。ある事に処する場合、自分の心のうちにそれに対する判断の基準がないときは、人は大変不安なものです。したがって、その基準を形成する確かなものが欲しいのです。ここで、経験というものは大変説得力のあるものであるがゆえに、経験したことで一致したことは信じやすいのです。
我々がずっと昔、因果の関連を洞察する知力がまだ不充分な動物であったころを考えてみましょう。不安の中では、何度かうまくいき危険のないことがはっきりしている行動に信頼を置くことは理に適ったことです。この動物的な記憶が、我々の深層心理に刷り込まれているのではないでしょうか。
「3人市虎(しこ)」という中国の言葉がある。町のなかに虎が出たことを最初に人から聞いたときは信じないが、2人目に聞いたときは多少不安になり、3人目から聞いたときはそれを信じてパニックになるという俚諺です。

人が、数は少なくても一致したことを信じ易いということを示すもう一つの例として、次のものを考えてみます。
「いまあなたが、A案とB案のいずれかを決めなければならないとする。参考のため、何人かの意見を訊いてみる。3人に尋ねて3人ともA案の支持を得た場合と、10人に尋ねて7人のA案の支持を得た場合とを比べて、どちらの場合の方がA案支持の確信を強めるか。」
ほとんどの人は、3人一致の方により深い確信を感じます。しかし、これは統計的には根拠のないことなのです。
ある人が確実に正しい意見を述べることが分かっていれば、その人の意見のみを訊けばよろしい。多くの人に尋ねるのは、それらの人々の意見が必ずしも正しいとはあらかじめ分からないからです。3人の意見具申者が実はAB案の良否の判定力を持たない、すなわち彼らの意見はちょうどコインを投げてその裏表で決める程度の信憑性しかない、と仮定しましょう。そのとき、たまたまA案をよしとする3人の意見の一致は1÷23=1/8で起きます。同様に、10人中7人の意見の一致の確率は、確率論によれば0.117で、これは1/8に極めて近いものです。すなわち、確率的には両方のケースは同等に起こり得るのです。しかし、人は直感的に3人の一致の方に信頼を置きます。すなわち、自分の周りに起きたたまたま一致した出来事に基づき、自分のものの見方を形作っていきます。そしてその後は、この見方に沿ってものごとを解釈していくのです。このように、人は偏見の固まりともいえるのです。



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