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2018年7月8日日曜日

原理レベルの類似


物事の類似性について(その6

5) 原理レベルの類似 
 原理とは、非常に広い範囲にわたって物事の構成を支えている基本的な法則を指すとします。       
原理の例としては、‘保存則’があります。これは、ものごとは増えもせず減りもしないということです。たとえば、酸素と水素を化合させれば(すなわち水素を燃やせば)水ができるが、化合で使われた酸素と水素の合計の重さと生じた水の重さは同じです。これを、‘質料保存則’といいますが、化学の世界では元の物質が化合してまったく違うものになるので、このことがなかなか気付かれませんでした。

物体の運動などを研究する物理学の世界では、どのような運動過程でも時間を逆にした運動が可能であることが分かっています。振り子の運動を考えてみましょう。振り子が一番高く上がった所では、振り子は一瞬止まり速度は0である。振り子が一番低い所では、速度が最大です。もし抵抗がなければ、この運動が限りなく続くが、力学ではこれを‘全体の力は保存されて、位置と速度に交互に変換される’とみます。すなわち、力の保存則が成り立っていると解釈します。もっと一般的には、‘エネルギーの保存則’が成り立っているのです。全体のエネルギーは、増えもせず減りもしない。ただ、エネルギーの形を変えるだけです。実は、物質も一種のエネルギーであり、物質をエネルギーに変えて爆弾にしたものが原子爆弾なのです。このように、すでにあるものは不生不滅の原理の中で動いているのです。

ダーウィンは、生物の進化の原動力として‘適者生存’という考えを打ち出し、極めて多様な生物の存在をこの一言でもって説明しました。この‘適者生存’は、生き永らえるためにすべての生命が従っている正に大原理なのです。地球の歴史を見ると、何度か大きく変化しています。その度に、自分をとりまく環境に対し有利になるように自分を変え得た動植物が、生き延びてい興味ました。生物が環境の大変革に際し生き延びるために工夫した様々なことは、アイデアの宝庫です。試みに、蝶の変態を思い出してみましょう。あのイモムシのような地をはっていたものが、突如マユをつくりはじめ、その中で自分の古い体を解体し、まったく別の形態を持った蝶に変身するのです。どうして自然はこのような事を思い付いたのでしょう。

さて、人の作った組織体も‘生き延びる’という目的を持つ点において、生命体と同じです。従って、企業や国家等の盛衰についてもこの‘適者生存’という大原理を通して占うことができます。いま変革の嵐の最中にある企業としては、進化の歴史から学ぶことが多いはずです。

 白砂と黒砂を初め別々に置いておく。次にこれを1つのバケツに入れ、他のバケツに移すことを繰り返すとします。すると、白砂と黒砂は次第に混ざって全体としては灰色の砂になります。移した何回目かに偶然に、左半分が白砂で右半分が黒砂であることも理屈としては考えられますが、現実には決して起こらない。自然現象は、かならず白砂と黒砂が次第に一様に混ざっていく方向に進みます。この混ざり具合を数学的に数値で表したものをエントロピーといいます。エントロピーで測れば、自然現象は必ず増大する方向に向かいます。これは大原理で、自然現象に関する限り、これに反する現象は見つかっていないのです。


総論

 一見関連のない2つの物事の間に類似性を感じる能力は、新しい視点をつくりだすのに本質的に大切な感性です。いま、類似性にはいくつかのレベルがあることを知りました。この見晴らしの良い知識の高みに立って、創造性がなによりも大切な今日、新たなる視点に達する感性を意識して磨きましょう。







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