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2018年7月3日火曜日

構造レベルの類似性



物事の類似性について(その4)

3) 構造レベルの類似(モデル) 
構造レベルの類似とは、2つの事柄の結果を生み出す仕組みが似ているときをいいます。すなわち、物事の成り立ちを各々要素に分けて考えるとき、2つの事柄で、それら要素の相互関係の構造の面で類似が見られるときです。

たとえば、一定量の栄養が供給されてある領域内に繁殖する細菌と、一定領土内に生活している人間との間には、その増え方に類似がはっきりとみられます。どちらも、その数が少なく食べ物が豊富なときは、その数に比例して増えていきます。増えればますます増えやすくなるのであるから、結果としての増え方は爆発的になります。しかし、容易に想像できるように、増えすぎると食料不足の発生等生きる環境が悪くなります。そうすると、増える率が減ってきます。このように、増殖していく構造は細菌と人間とでは同じであるので、双方の増え方の特徴も同じになるのです。この、一定の制約の下で生物が繁殖していくありさまをあらわす曲線を、ロジステイクス曲線といいます。

実は、企業が画期的な新製品を売り出すとき、その販売総量はこの曲線と同じ構造を持つとされています。そこで、新製品が総量としてどれくらい売れるであろうかが知りたいとき、ある時点までの販売データをこの曲線に当てはめて、これを推測しています。
また、昆虫などの年毎の発生数も、ロジステイクス曲線を生み出すのと同じ構造に従っていることが分かっています。もっとも、昆虫の場合は、細菌のように短い期間に連続的に増えるのではなく、1前年の卵の数により今年の数が決まるという特性により、‘カオス’と呼ばれる現象が起きることが知られています。

   

                    ロジステイクス曲線    
                  


 構造レベルの類似を示すものとして,もうひとつの例を挙げましょう。

我々の生活のいたる所で、行列に並んで自分がサービスを受ける順番を待つ場面に出会います。たとえば、スーパーマーケットでは、清算のためレジで順番を待ってお金を払います。タクシー乗り場でも順番を待ちます。病院でも診察の順番を待ちます。これらの事柄には共通した構造があり、従って、どの場合にも同じような現象が現れます。たとえば、待ち行列の長さは通常はあまり長くならないが、一度長くなると更に長くなる傾向があります。
車に乗って渋滞に巻き込まれていらいらし、それがいつのまにか嘘のようになくなる経験は、ほとんどの人が体験したことでしょう。実は、道路の渋滞も先に述べた順番を待つときに現れる現象と同じ構造に支配されています。交通量と道路間のつながりが分かれば、どこでどの位の渋滞が発生するかは計算できます。

これらの現象の各々は、待ち行列と呼ばれる一つの共通する論理構造に支配されたものであり、構造レベルでの類似性を持つ現象群なのです。

広場の中央に居る酔っ払いがひどく酩酊して、足元がまったく定まりません。彼の足取りを一歩毎に東西南北にでたらめにとるものと見て、このときのふらふらとさ迷う足取りを‘酔歩’と呼びます。学術的にはランダムウオークと呼ばれ、非常に多くの現象の基本構造となっているものです。たとえば、煙が広がっていく様子、水に落としたインキが広がっていく様子あるいは熱が伝わっていく様子において、その基本として働いている構造はまったく同じなのです。
   

                            ランダムウオーク

どんな構造でも、分かってしまえば簡単ですが、なかなか気がつかないものです。
コレラは大変危険な伝染病で、もし発生すれば世界保健機構へ報告しなければならない病気の一つです。通常は、その伝染ルートは別の発生源からの旅行者の持ち帰り等で説明がつくものですが、それが分からない孤立したケースがありました。しかし、ロンドン熱帯医学校の熱心な研究者は、それが空から来たのではないかと思い付き、インド大陸からパリ、ロンドンなどへの定期航空の飛行経路を地図上に書き込んでみました。すると、今まで説明の着かなかったケースはすべて、飛行経路の内に収まりました。すなわち、飛行機の汚水の空中散布という構造が原因ではないかと強く推定されたのです。




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